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中国のユーグー、電動自転車の電池の診断にAIをつけ、過去の212件の試験で専門家に回さずに済んだ割合が言語モデルだけの約5割に対し9割を超えた

2026.10.24
中国のユーグー、電動自転車の電池の診断にAIをつけ、過去の212件の試験で専門家に回さずに済んだ割合が言語モデルだけの約5割に対し9割を超えた

中国・杭州のユーグー・テクノロジー(Hangzhou Yugu Technology)は、電動自転車の電池交換のサービスで、配達員の相談と電池の警報に、AIの診断をつけて窓口に渡す流れを入れました。それまで窓口の担当は、電池の専門家に聞いてから答えていました。同社と大学の論文によると、過去の相談104件と警報108件での試験で、専門家に回さずに済んだ割合は92.31%と95.37%でした。同じ事例で言語モデルだけに答えさせると、47.12%と56.00%でした。

何が起きたか

中国では、電動自転車が3億5000万台を超えています。出前の配達員は長い距離を走るため、充電の済んだ電池に取りかえるサービスを使います。ユーグーは、この電池交換のサービスを運営しています。

配達員は「急に電源が落ちた」「走れる距離が短い」といった相談を、スマートフォンのアプリで窓口に送ります。相談の約8割は、走っているときの電池の調子についてです。窓口の担当は相談を電池の専門家に回し、答えを受け取って配達員に返していました。

電池の温度や電圧の警報も、安全の担当が専門家に聞いてから対応していました。警報の40%は温度、12%は電圧です。同社は、この流れでは電池にくわしい専門家の手間が大きくかかっていたと説明しています。

AIの使い方

ライブレイン(LiBrain)は、3つの部分でできています。

  1. 電池と充電の棚のセンサーから、電圧・電流・温度など71の項目を集めます。
  2. 電池の記録で事前に学ばせた予測モデル(パラメーター10億)が、異常、電池の中のショート、膨らみの有無と、劣化の度合い、寿命の残り、走れる距離の残りの6つを出します。
  3. メーカーの仕様書と、電池の指標188項目の説明をまとめた資料から、関係する部分を探します。言語モデルは、予測の結果と探した資料を読んで、配達員や安全の担当に向けた助言を書きます。

窓口と安全の担当は、まずこの診断を見ます。正しいと判断すればそのまま使い、足りなければ専門家に回します。言語モデルはいくつか比べたうえで、公開のモデル(DeepSeek-R1-Distill-Llama-70B)を選びました。社内のサーバーで動かしています。

結果

試験には、過去の相談104件と、過去の警報108件を使いました。どの事例にも、専門家が診断と対応を書いた正解があります。窓口の担当がAIの助言で片づけた事例を「回さずに済んだ」、専門家に回した事例を「回した」と数えました。

📊 専門家に回さずに済んだ割合 相談104件 警報108件
ライブレインすべて 92.31% 95.37%
電池の予測モデルを外す 75.00% 78.00%
説明の資料を外す 71.15% 74.01%
言語モデルだけ 47.12% 56.00%

出典:論文の表3。言語モデルは DeepSeek-R1-Distill-Llama-70B。

ほかの言語モデルに替えると、GPT-4o-mini で89.42%と91.67%、より小さい Qwen3-32B で77.45%と87.04%でした。

電池の予測モデルは、異常の判定で、異常としたもののうち正しかった割合が99.2%、異常を見逃さなかった割合が95.9%でした。同じデータで比べたほかの方式は、DLinear が92.9%と91.6%、PatchTST が92.9%と86.8%です。

同社の説明では、ライブレインは本番で年に1000万件を超える相談に助言し、100万件を超える警報を扱っています。検査場でも、1日に50本を超える電池を調べ、約1割を安全の基準に合わないと判定しています。

公表された説明と、確かめられていないこと

📢 論文の説明 ⚠️ 書かれていないこと
9割超を専門家に回さずに済んだ 試験は過去の212件。本番で専門家に回る件数がどう変わったか
警報108件で、予測モデルを外すと78.00%、資料を外すと74.01%、言語モデルだけだと56.00% 108件から計算すると出ない値。何件をもとにしたか
専門家の手間が減る 専門家の人数や、使う時間の変化
窓口の担当がAIの助言で片づけた事例を数えた 片づいたかを、だれがどう決めたか
年1000万件を超える相談に助言している 答えるまでの時間、配達員の満足、電池の事故の数の変化
開発した会社と大学の論文 外の人による確かめ

凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:論文(Li ほか、2026)

誰に関係するか

業務用の冷蔵庫や空調、給湯器をリースする会社や保守会社で、利用者の相談を窓口が技術者に聞いて答えているなら、ユーグーと同じ組み立てが使えます。機械のセンサーの数値は、言語モデルにそのまま読ませません。まず専用の予測モデルで「異常か」「あとどれだけ使えるか」を判定し、社内の説明資料から探した部分とあわせて、窓口向けの下書きを書かせます。

試すときは、技術者が答えを付けた過去の相談を100件ほど集め、「技術者に回さずに済んだ割合」を言語モデルだけの場合と比べます。だれが「片づいた」と決めるかは、比べる前にそろえておきます。

まとめ

9割超という数字は、過去の212件での試験から出たもので、AIを入れる前と後の比べではありません。言語モデルだけとの差は、電池の予測モデルと説明の資料を足した分の働きを示しています。本番で専門家に回る件数や、答えるまでの時間がどう変わったかは、この論文からは分かりません。

参考文献

  • Zhao Li、Zixin Lin、Donghui Ding、Yichen Zhong、Biao Wang、Haitao Xu、Peng Cai「LiBrain: LLM-Powered Li-ion Battery Diagnostics with Time-Series-Aware Retrieval-Augmented Framework for E-bikes」Proceedings of the AAAI Conference on Artificial Intelligence 40(47), 40045–40053、2026-03-14、https://ojs.aaai.org/index.php/AAAI/article/view/41439 (doi:10.1609/aaai.v40i47.41439)、確認日 2026-10-24

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

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