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ブラジルのセアラ州裁判所、判決理由の下書きをAIに作らせ、どの主張・証拠・過去の判決を引いたかに印を付けて判事が確かめられるようにした

2026.10.24
ブラジルのセアラ州裁判所、判決理由の下書きをAIに作らせ、どの主張・証拠・過去の判決を引いたかに印を付けて判事が確かめられるようにした

ブラジル北東部のセアラ州裁判所(Tribunal de Justiça do Estado do Ceará、TJCE)は、判決の理由の下書きを作るAI「サラ(SARA)」を使っています。AIは訴えの書類から主張と証拠を拾い、似た過去の判決を探します。判事が結論を選ぶと、それに合わせて理由を書き、どの主張・証拠・判決を引いたかに印を付けます。判事22人の評価では94.4%が「使える」でしたが、使える・使えないの二択です。AIの書いた理由を、判事の書いたものと比べた事件は5件だけです。理由を書く時間がどれだけ減ったかの数字も出ていません。論文は開発した大学と裁判所の関係者が書いたもので、外の人の検証はありません。

この事例で分からないこと

  • 判決の理由を書く時間が、どれだけ減ったか(数字がありません)
  • 「使える」94.4%は二択の評価で、正しさを測ったものでも、サラなしと比べたものでもありません
  • 判事が書いた理由との比べは5件だけで、指標によっては下がった事件もあります
  • 書いたのはサラを作った大学と裁判所の関係者で、外の人による検証はありません

何が起きたか

判決を書くには、訴えの書類、相手の反論、証拠、過去の判決を読み合わせます。事件が多いと、判事と職員が読む量も増えます。

ブラジルでは2023年、判事がAIの作った架空の過去の判決を引いてしまい、国の司法の監督機関(CNJ)が調べる件がありました。AIで書いた文書は、根拠をたどれることが求められています。

サラは、セアラ州裁判所とフォルタレザ大学(Universidade de Fortaleza、Unifor)が2022年から作ってきました。裁判所のニュースによると、2024年9月までは、州都フォルタレザの民事の2つの部だけが試験的に使っていました。2024年9月16日から、州都の民事の部の判事と職員が申し込んで使えるようになりました。2025年7月21日には裁判所の電子の事件管理の仕組み(PJe)の一審に組み込まれ、2026年2月18日からは二審でも使えます。ただ、これらのニュースが紹介するサラの働きは、主に書類の要約と報告書の下書きです。判決の理由の下書きをいつから使っているかは、書かれていません。

AIの使い方

サラは、5つの段階で下書きを作ります。

  1. スキャンした書類や証拠の画像を、文字の読み取り(OCR)で文字にします。
  2. 言語モデルが、訴えと反論の書類から、双方の主張と、裁判所に求めていることを一覧にします。
  3. 証拠ごとに中身をまとめ、どの主張を支えるかを結びつけます。
  4. 州裁判所が2023〜2024年に民事の事件で出した判決2万2106件を、主張や争点のつながりで整理したデータから、似た判決を探します。
  5. 判事や職員が、使う証拠と過去の判決、結論(認める・退ける・一部認める)を選び、理由の要点を入れると、言語モデルが理由の文章を書きます。

書いた文章には、どの主張・証拠・過去の判決を引いたかの印が付きます。引かれなかった主張や証拠も、一覧で見られます。判事は、抜けた点を見つけてから直せます。試験ではGPT-4oを使い、裁判所が認めたモデルの中から替えられます。

裁判所の判事で、計画の共同の責任者であるリカルド・アレシャンドレ(Ricardo Alexandre)氏は、AIが書いた文書はどれも、使う前に人が見直す必要があるとしています。

発表された数字

📊 論文の数字 中身
使っている人 240人超
直近1か月の利用 476件の事件で510本の文書(論文の時点)
判事の評価 判事22人が2024年6月14日〜2025年8月13日に390本を見て、94.4%を「使える」とした
判事の文章との近さ 判事が選んだ5件で、過去の判決のデータを使わない場合より、ある指標で平均2.97%上がった

出典:論文。「使える」は、組み立てが整い、法として筋が通り、判決の文書を書くもとにできる、という意味です。評価は二択です。

「使えない」とされた5.6%では、中身が浅い、大事な点が抜けた、過去の判決の当てはめが違う、ありもしない議論が入った、などの理由が書かれていました。判事の文章との近さは、表の平均では上がりましたが、5件のうち1件は同じ指標で、2件は別の指標で下がりました。論文は、5件では少なく、指標は法としての正しさまでは測れないと書いています。

論文は、裁判所の2024年の判決数が73万7000件を超え、前の年より15.3%増えたことにも触れ、サラが大きな役割を果たしたとしています。ただし、サラの分は切り分けられていません。

公表された説明と、確かめられていないこと

📢 論文と裁判所の説明 ⚠️ 書かれていないこと
判事22人の94.4%が「使える」 正しさの測定と、サラなしとの比べ(評価は二択だけ)。最終の判決に、下書きをどれだけ直して使ったか
判決数の伸びにサラが大きな役割 サラの分の切り分け
時間の節約につながる(論文の要旨、裁判所のニュース) 理由を書く時間が、どれだけ減ったか
引いた根拠に印を付け、抜けを見られる 印の付け違いや、ありもしない判決が出た割合
過去の判決のデータで、判事の文章に近づいた 5件より多い事件でも同じになるか。法として正しいか
開発した大学と裁判所の関係者の論文 外の人による確かめ

凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:論文(Bonfim ほか、2026)、セアラ州裁判所のニュース(2024-09-16、2025-07-21)

誰に関係するか

保険会社で、事故の書類と写真を読み合わせて、支払いを決めた理由の文書を書く審査の担当なら、サラの順番をそのまま借りられます。書類から主張と根拠を一覧にし、どれを使うかと結論は人が先に決めます。AIはそのあとに理由の下書きを書き、引いた根拠ごとに印を付けます。

自治体の不服申し立ての回答や、社内の監査・懲戒の報告書も、相手の言い分を漏らさず扱ったかが問われる文書です。引かれなかった主張を一覧で出せば、人は抜けを先に確かめられます。

まとめ

論文の数字は、使う人の数と、判事の二択の評価が中心です。理由を書く時間や、最終の判決に下書きをどれだけ使ったかは、まだ示されていません。裁判所がこの2つを出せば、サラの効果を確かめられます。

参考文献

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

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