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スペインのルーゴ県議会、自前のサーバーで動くAIの道具を17個作り、議長室のメール整理が1日約1時間から約5分になった

2026.10.26
スペインのルーゴ県議会、自前のサーバーで動くAIの道具を17個作り、議長室のメール整理が1日約1時間から約5分になった

スペイン北西部ガリシア地方のルーゴ県議会(Diputación de Lugo)は、公開されているAIのモデルを自前のサーバーで動かし、職員向けの道具を17個作りました。文書の要約、録音の文字起こし、メールの仕分けなど、1つの道具に1つの仕事を任せています。データは県議会のサーバーから出しません。県議会の戦略文書によると、議長室では1日約1時間かかっていたメールの整理が約5分になりました。測り方は書かれていません。

何が起きたか

スペインの県議会は、県の中の小さな町や村に、電子の行政の仕組みを提供する役目を持っています。ルーゴ県には67の市町村があり、人口2万人を超えるのは県都のルーゴ市だけです。多くは人口2000人に届きません。

県議会は2025年、専用の予算を持たないまま、AIの道具づくりを始めました。経済協力開発機構(OECD)のAIの事例集(OECD.AI)の掲載ページは、この始まりを「下からの取り組み」と書いています。

2026年5月26日、県議会の本会議は、AIの戦略「メンシア(MencIA)」を全会派の賛成で決めました。期間は2026年から2030年です。議長のカルメラ・ロペス氏は「ルーゴの人のデータをルーゴから出さない」と話しています。県議会は、道具をまず県議会の中で使い、そのあと県内の市町村にも広げる計画です。

AIの使い方

仕組みは3つに分かれます。

  • モデルを動かすところ:計算用の半導体(GPU)を積んだ県議会のサーバーで、Ollama や Llama.cpp を使ってモデルを動かします。戦略文書によると、今使っているのはスペインの公的な計画で作られたサラマンドラ(Salamandra 7b)、グーグルの Gemma 4、オープンAI の GPT-OSS、Qwen 3.6 です。
  • 道具の画面:Docker で道具をまとめ、Open WebUI や Streamlit などで画面を作っています。どの道具も、数回の操作で1つの仕事が終わるように作っています。
  • 道具と資料をつなぐところ:LangChain で、モデルと、それぞれの道具に決めた県議会の文書をつなぎます。相談役が読むのは割り当てた文書だけで、ネットにはつながりません(調べもの用の1つを除く)。

アプリは8個です。長い文書の要約、紙の文書の読み取り、ガリシア語とスペイン語の録音の文字起こしがあります。国の官報(BOE)から、県の税の担当に関係する破産の手続きの公告を毎日拾う見張りもあります。メールと添付の中身を要約して仕分ける道具、補助金の募集要項から締め切りや対象を抜き出す道具も含みます。

相談役は9個です。公共の契約の法律、公務員の決まり、社内のパソコンの困りごとなど、相談役ごとに読む文書を限っています。法令の相談役は、意見を言わず、当てはまる条文を示します。

ガリシア語で同じように使えることが、道具を入れる条件です。人に法的な結果が及ぶ手続きでは、最後は必ず人が決めます。

発表された数字

📊 仕事 導入前 導入後 出典
議長室のメールの整理(1日) 約1時間 約5分(92%減) 戦略文書、OECD.AI
官報の破産の手続きの公告の拾い出し 15〜20分 数秒 OECD.AI のみ
補助金の募集要項の読み取り 約30分 約2分 OECD.AI のみ

出典:ルーゴ県議会「Estrategia MencIA 2026-2030」6.3節、OECD.AI「MencIA」の掲載ページ(「内部の測り」とだけ書く)

戦略文書は、メールの数字を「いちばん大事な記録された使い方」としています。官報と募集要項の数字は、1回あたりか1日あたりかが書かれていません。

戦略文書には目標も載っています。2028年までに、AIを使う手続きの処理時間を平均20%減らし、職員の60%がAIの研修を受けます。2030年には35%減、95%が目標です。どちらも目標で、まだ結果ではありません。

公表された説明と、確かめられていないこと

📢 公表されている説明 ⚠️ 確認できていない点
議長室のメールの整理が約1時間から約5分になった だれが、何日分を、どう測ったか
官報と募集要項の読み取りが速くなった 1回あたりか1日あたりか。拾いもれや読み違いがあったか
17個の道具が動いている 何人の職員が、どの道具を、何回使っているか
データはサーバーから出ない 外の人による仕組みの点検
道具を県内の市町村に広げる 市町村での使用は2028年からの予定で、まだ結果がない

凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:ルーゴ県議会の戦略文書・本会議の発表、OECD.AI の掲載ページ

誰に関係するか

設計図や見積もり、契約書など、外のAIサービスに出せない文書を持つ中小企業なら、この作り方をまねできます。公開されているモデルを社内のサーバーで動かし、1つの道具に1つの仕事だけを任せます。相談役には決まった文書だけを読ませ、ネットにはつなぎません。

道具を作る前に、その仕事に毎日何分かかっているかを測っておくと、あとで比べられます。ルーゴ県議会の戦略文書に載っている数字は、議長室のメールの1件だけです。

まとめ

ルーゴ県議会が出している数字は3つの仕事の分で、どれも県議会の内部の測りです。使っている職員の数や誤りの割合を、県議会はまだ公表していません。

参考文献

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

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