コロンビアのカリ市は、手続きを案内する窓口の職員が使うAIの助手を試しました。試すなかで、答えの元になる情報がばらばらで古いことが分かり、各部署が自分の手続きの情報を直す決まりを作りました。経済協力開発機構(OECD)の事例を集めるサイト「OECD.AI」には、処理の時間が25%減ったという数字があります。ただ、この数字は市の資料になく、内部の調査で前と後を比べただけで、外の人による検証もありません。元の情報を直しながら測ったのでAIの分は切り分けられず、使う組と使わない組を比べる試験の結果も見つかりません。
この事例で分からないこと
カリ市は人口約250万人のコロンビアで3番目に大きな市です。市には、38の部署の手続きを一か所で受ける窓口があります。市役所の窓口と地区の14の窓口、電話の195番、ネットのチャットで受け、1日に約1,000件の問い合わせが来ます。手続きの数は218です。市の資料によると、この窓口の職員は18人で、客の77%は窓口に来ることを選びます。
困っていたのは、情報がばらばらで、職員によって案内が違うことでした。答えるのが遅れ、客を迷わせ、市への信頼も下がっていました。
市の組織の改善の担当部署は、米州開発銀行(IDB)の支えを受けて、2025年に約8か月かけて窓口を見直しました。200人超の職員がむだを減らす手法の研修を受け、19の部署の60人超が改善の点を話し合いました。AIの助手「カリ・レスエルベ(Cali ResuelVE)」は、この見直しの一部です。
助手はアンソロピック(Anthropic)のクロード・ソネット(Claude Sonnet)を使います。職員がふつうの言葉で聞くと、答えをその場で作ります。答えの元は、市の手続きを管理する仕組みのデータだけです。このデータをAPI(ほかの仕組みからデータを取り出す口)で出し、一か所の資料の置き場にまとめて、そこから探して答えます。OECD.AIの掲載ページは、全部をAIに生成させる作りではなく、客と話すのは職員のままだと書いています。
試すなかで、手続きの費用の出し方に誤りが見つかりました。答えが出るまで4分を超えることもあり、別の基盤のモデルを使って1分未満にしました。
主な問題は、技術よりも仕組みの側にありました。情報がばらばらで古く、部署どうしのつながりが弱く、成果を測る物差しもありませんでした。市は、手続きの情報をウェブに出す決まりを強め、各部署が自分の情報を直す役を持つようにしました。窓口の働きを測る道具を8つ受け取り、測る指標は、日々の仕事の出来、案内の質、受け止めと成果の3つに分けることを検討しました。
| 📊 項目 | 数字 | 出どころ |
|---|---|---|
| 処理の時間 | 25%減 | OECD.AIの掲載ページ(内部の調査で前と後を比べた) |
| 誤り | 18%減 | 同上 |
| 内部の使う人の満足 | 72% → 89% | 同上 |
| 答えが出るまでの時間 | 4分超 → 1分未満 | 市と米州開発銀行のPDF(別の基盤のモデルを使って短くした) |
出典:OECD.AI「Cali ResuelVE Knowledge Library (Subnational: Cali)」(2026-09-08 掲載)、市と米州開発銀行「Cali ResuelVÉ. De la orientación a la acción. Resultados 2025」
| 📢 公表されている説明 | ⚠️ 確認できていない点 |
|---|---|
| 処理の時間が25%減り、誤りが18%減った(OECD.AIの掲載ページだけ) | 何の時間か、何を誤りと数えたか、件数と人数 |
| 元の情報を直しながら試した | 数字のうち、AIの分と情報を直した分の切り分け |
| 答えは市の確かめた情報だけから作る | 答えの誤りを、だれがどう確かめているか |
| 税の部署で、使う組と使わない組を比べる | 2026年1〜5月の予定だった試験の結果 |
| 25%・18%・72%→89%の数字 | 外の人が確かめた記録 |
| 将来は市民が直接使う道具にできる | 時期と費用 |
凡例:📢=当事者が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:OECD.AIの掲載ページ(OECDの担当者が掲載)・市と米州開発銀行のPDF
市は次に、同じ分割払いの手続きを持つ2つの部署を、助手を使う所と使わない所に分けて比べるとしています。AIの分の効果を切り分けるためです。市の資料では、試す先に税の部署を選び、2026年1〜5月に行う予定でした。
多くの部署の商品や手続きの問い合わせを一か所で受けるコールセンターに関係します。AIの助手を入れる前に、答えの元になる資料の持ち主を部署ごとに決め、古い資料を直す手順を作れます。
商店街の組合や観光協会の案内所で、店や催しの情報を何人もの担当で答えているなら、AIを考える前に、元の情報を一か所にまとめ、だれが直すかを決めるところから始められます。
OECD.AIの掲載ページは教訓として、AIが役に立つのは、手順がはっきりし、データが確かで、部署が持ち主として責任を持つときだと書いています。