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ニュージーランドのワイララパ病院、退院の要約からAIに治療で起きたけがの候補を拾わせ、医師が確かめた102件の8割は院内の報告になかった

2026.10.29
ニュージーランドのワイララパ病院、退院の要約からAIに治療で起きたけがの候補を拾わせ、医師が確かめた102件の8割は院内の報告になかった

ニュージーランドの地方の病院、ワイララパ病院は、退院の要約をAIに読ませ、治療で起きたけがの候補を拾わせました。医師が候補を全部確かめ、けがと認めた102件のうち81件は、院内の事故の報告に載っていませんでした。病院を運営する組織の2人が、2026年10月13日に査読前の論文で出した結果です。AIが拾わなかった要約は人が読み直していないので、見落としがどれだけあるかは分かりません。

何が起きたか

ワイララパ病院(Wairarapa Hospital)は、国の医療の組織ヘルス・ニュージーランド(Health New Zealand | Te Whatu Ora)が運営する病院です。

ニュージーランドには、治療で起きたけがを、だれのせいかを問わずに補償する国の仕組みがあり、事故補償公社(ACC)が運営しています。ただ、補償を申し立てるには、まず医師が「これは治療で起きたけがだ」と気づく必要があります。院内の事故の報告は、実際のけがの一部しか拾えないことが、前から知られていました。

そこで病院は2025年7月13日から2026年1月13日までの半年、退院の要約をAIに読ませる試験をしました。対象は、この間に退院した入院の患者の要約2,642件の全部です。

AIの使い方

AIは、オープンAIの言語モデル「GPT-4o-mini」です。マイクロソフトのクラウドのオーストラリアの拠点で動かし、データはヘルス・ニュージーランドの管理する範囲から出しません。

要約は週に1回まとめてAIに渡します。指示では、けがの候補を出すときは要約の文をそのまま引き、書かれていないことは推し量らないように決めました。答えは決まった形の表で返させ、候補ごとに「とても可能性が高い」「可能性がある」などの印を付けさせます。

AIが出した候補は、医師が全部読みます。医師は候補を、けがと認める、けがかもしれない、けがではない、要約に根拠がない、の4つに分けます。補償を申し立てるかどうかは、患者を担当する医師に任せました。AIの知らせは「参考の案」として書き、始める前に病院の医療の責任者が医師たちに説明しました。

要約に根拠のない答えは、AIの誤りとしてではなく、安全の出来事として記録し、指示の直しに使いました。

発表された数字

当たりの割合は、AIの候補のうち医師がけがと認めた割合です。

📊 項目 数字
調べた退院の要約 2,642件(半年の全部)
AIが出した候補 237件(9.0%)。週に平均約10件
医師がけがと認めた 102件(候補の43.0%)
けがかもしれない 43件(認めた分と合わせて61.2%)
けがではない 81件(34.2%)
要約に根拠のない答え 11件(4.6%)
認めた102件のうち、院内の事故の報告に載っていた 21件(20.6%)。載っていなかったのは81件(79.4%)
医師の手間 週に約25〜30分

出典:medRxiv の論文(2026-10-13、査読前)。当たりの割合は、医師の確かめと比べた数字です

AIの付けた印でも差が出ました。「とても可能性が高い」とした候補は78.2%がけがと認められ、「可能性がある」とした候補は25.5%でした。根拠のない答えの11件は、すべて「可能性がある」の側にありました。人の手が足りないときは、印で、どこまで人が見るかを決められると論文は書いています。

認めた102件のうち58件を、補償の検討に回しました。残りは、治療でふつうに起きることと医師が判断した、すでに申し立て済みだった、記録が足りなかった、などの理由で回しませんでした。回す相手をまちがえた手作業のミスもありました。AIをきっかけに出た新しい申し立ては7件で、3件が認められ、2件が断られ、2件は待ちでした。

同じ期間に病院から出た補償の申し立ては68件で、AIの候補と重なったのは17件(25.0%)でした。

公表された説明と、確かめられていないこと

📢 公表されている説明 ⚠️ 確認できていない点
候補の43.0%が、医師の確かめでけがと認められた ほかの人が別に記録を読み直したときの結果
院内の報告にないけがを81件拾った AIが拾わなかった要約の中の、見落としの数
根拠のない答えは4.6%だった 指示を直したあとに、根拠のない答えが減ったか
医師の手間は週に約25〜30分 測り方。ほかの方法で記録を読むときの手間との比べ
AIをきっかけに申し立てが7件出た 重なった17件のうち、どれがAIのおかげか
1つの病院の半年の結果 ほかの病院で同じ結果になるか

凡例:📢=論文の書き手が公表している説明 ⚠️=出典に書かれておらず、こちらで確認できていない点
出典:medRxiv の論文(2026-10-13)。書き手はヘルス・ニュージーランドの2人で、査読前です。倫理の委員会の承認は、始める前に取っていないと論文に書かれています

誰に関係するか

介護施設で事故やヒヤリとした出来事の報告をまとめている担当者は、日々の介護の記録から、報告されていない出来事の候補を拾う形を考えられます。すでにある記録を使うので、そのために新しく書くものはありません。

建設会社の安全の担当者なら、作業の日報を週に1回AIに読ませ、けがにつながりかけた出来事の候補だけを人が見る使い方があります。AIに日報の文を引かせれば、人は元の文を見て判断できます。

どちらでも、AIの印ごとに当たりの割合を数えておくと、人が見る量を決めやすくなります。

まとめ

論文は、次の評価では、AIが拾わなかった記録も人が読み直し、見落としの数を出すべきだと書いています。

参考文献

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Kamone
著者 Kamone

30歳で学者志望からITエンジニアに転身。通信・金融業界におけるインフラ領域を中心に、オンプレミスからクラウドまで幅広く経験。AWS学習コミュニティでは公認メンターとして教材制作や講師を務める。現在はリツアンSTCにて事業推進に携わり、AI活用とエンジニア支援の高度化に取り組んでいる。

Kamone
著者 Kamone

株式会社リツアンSTC社員。

1984年 東京都中野区生まれ。

大学中退後、工場や警備員などを経て、何もスキルが身についていないことに危機感を覚える。
2014年 何か手に職をつけなければと思い、電子専門学校からエンジニアになった弟を見て「コイツにできるなら俺もできる」と安易な考えで未経験からIT業界に飛び込む。
そこは「まともな案件に入れなければ営業としてこき使われるか中国に送られるらしい」と恐ろしい噂が飛び交う会社だった。
「とんでもないところに来てしまった…」と戦慄するも、運よく大手新聞社系のインフラチームから声がかかり、エンジニアとしてのスタートを切る。

その後、SESを転々としながら通信・金融業界のオンプレ・クラウド案件を中心にインフラエンジニアとして経験を積む。

2021年 AWS学習サービス「Cloudtech」に参加し、公認メンターとして書籍出版プロジェクトや教材制作・講師などのコミュニティ・サービス運営に関わる。

2023年 ゆとりーマンのYoutube動画で新興SESの闇とリツアンの存在を知り、転職。(当時所属していたSES企業が動画で紹介されていた特徴に当てはまっていて愕然)
その後、CloudTechとリツアンの橋渡し役を担い、合同プロジェクト「テラコヤテック」の運営に関わる。
2025年 リツアンの「エンジニアに一円でも高い報酬を」「会社は社員に使われるためにある」「出入り自由」といったスタンスに共鳴。エンジニアから転向し、リツアンの事業推進に参画。
現在に至る。

他人の文体を真似たり、他人が書いた文章を手直しするのが得意、という若干嫌な気持ちにさせる特技を持つ。
AI活用を鋭意研究中。
(リツアンいいとこ一度はおいで。)

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